藍を育て藍に染まる

東京で作業をしていた際、湘南で少し波が上がったので、鵠沼にある藍染工房Litmusのメンバーとサーフィンをした後、彼らの工房にお邪魔させていただきました。

海岸へ通じる県道沿いの古い家屋を改造して作られた工房内には黒ずんだ液体が満ちた桶が並び、独特のしかし刺激の無い匂いに満ちています。人類最古の染料と考えられている藍を使い、江戸時代を中心に行われていた伝統染色方法、天然藍灰汁醗酵建(てんねんあいあくはっこうだて)と呼ばれる方法で彼らは様々な物を藍で染めています。

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醗酵建

簡単に染めの工程を説明しますと畑で藍の葉を収穫し、それを醗酵させ藍染に必要な色素”インジゴ”を作ります。それは”すくも”と呼ばれそれを桶に約1週間ほど日本酒や灰と共に寝かし、色を液体状にしていきます。そしてその液体に布地を浸し、引き上げ、水に流し、布地が空気と触れ合うことにより青色を発し、布地に付着します。少し化学的に書くと、水に溶けない青の染料”すくも”を醗酵により液体に還元し布地が浸かれる状態にし、繊維を液体に浸し、繊維内に染み込んだ色素を酸素と反応させ、また水に溶けない形に戻す工程です。DSC00831  DSC00836

すくも

その工程の回数と時間により色の濃さが決定され、濃いものを作り出すには非常に時間と労力が費やされます。この手法は繊維に藍の色素を結合させ青色を発色している為、染め上がった布地は独特のテクスチャーがあります。生地の繊維を強化し、さらに藍の持つ成分は虫除け、アンチバクテリアによる消臭効果があると言われ、19世紀前半に中国から伝わって以降に身分の高いもの、侍、そして後に一般農民階級にまで普及しました。

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日本ではその藍をベースに48色もの色を使い分けるようになりました。そしてそれらの使用頻度は北斎や広重の浮世絵の中にも顕著に記されています。また浅草のスカイツリーの色も藍白と言われる藍をベースにした色が使われています。はるばる大陸を旅して、日本を代表する色となった藍色。日本文化のカラーパレットは藍が作り出したと言っても過言では無いでしょう。

時には絶対的な存在感があり、時には影のようにでしゃばらず、そして限りなく白く天の彼方に溶け込んでいく藍色。海から上がった後、そんな色の行き先を考えさせられる工房見学でした。

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藍畑(写真・松井裕二)

DSC00878藍に染まった紙の繊維

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工房

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展示会:http://www.kumazawa.jp/mokichi/okeba/

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展示会情報:07/19 – 08/01 : SOGO横浜

 

LITMUSへのお問い合わせ:

http://litmus.jp

NOBORU

NOBORU AKIYOSHI

UI/UX Designer

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