このMy Editionで書いたことのあるヴュルツブルクにフランクフルトから列車で向かっていた時のことであるが、途中でローカル列車を追い抜いたことがあった。その時その列車にはバンベルク行きという表示がなされていた。その日、ヴュルツブルクでレジデントを見学した後、一人で昼食をとっていた時、夕方の友人との待ち合わせまで時間が空いたなぁと考えていた。その時、朝に追い抜いた列車のことを思い出し、何の知識もなくそのバンベルクに行ってみようと急に思いつき、そのまま向かうことにした。ドイツは、日本同様に治安はよく公共交通機関も便利に発達しているのでむつかしいことではなかった. (女子の一人旅でも安心)
ビュルツブルクから列車で一時間の旅は心地よかった。自分が訪ねた11月はどっぷり秋色で車窓からの景色は黄や赤に染まった山々や色ずいたワイン畑で贅沢の極みであった。到着したバンベルクは人口7万人強の普通の駅前であった。とりあえず中心に行けば広場や聖堂があってそれなりのヨーロッパの田舎町が楽しめるのではと思い、とりあえず歩くことにした。途中ライン川とドナウ川を結ぶマイン=ドナウ運河を越えると旧市街の街並みになる。美しい。やはりこの街もバロックの街並みとなっている。
帰国後、バンベルクについてもう一度調べてみる。なんとこの街は戦災にもあわず、千年の風貌をとどめたドイツ有数の歴史都市であるということが分かった。突出した華やかさがあるわけではない。しかし無駄のない美しさと時間をかけて作られたであろう街としてのバランスのとれた景観は、おそらく旅行者たちをひきつけるのには十分であろう。私は金曜日の午後に訪ねたが、この落ち葉の美しいシーズンなのに全く旅行者がいない。恐ろしいまでにその独占感を楽しむことができた。
広場を横切ると川が見えた。川辺に回り込んでみると密集した街並みが突然上記の写真のように自然を残した中洲の景観になるではないか。しかも美しい建築物とそこにかかった橋と秋の樹木の景観が見事にマッチしている。
川の流れも水量が豊富で美しい。とても街の真ん中とは思えない。この街の真ん中の川の中州に立ったこの建物は市役所とのこと。川の両岸が争った時代にその公平さのために中州に建立され、橋の役割も果たしてきたようだ。壁面まで含め、実に美しい。
横から見ると全く普通の街の景観でまさかこの市役所が美しい清流にかかる橋状の建物であることが全く分からない。
橋の上から眺めた景色は下の写真のように、また全く違う景色を見せている。地元の人は、こちら側を小ベニスと呼んでいるらしい。360度すべてが個性的な景観である。
濡れた落ち葉を歩きながら人影の少ない街の景観を楽しむ。贅沢感がいっぱいにこみ上げる。ひょんなドイツの田舎町探索と思っていたが、想像以上の充実感。あとでわかったが、この街もやはり世界遺産であった。ドイツは奥が深い。
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